早いもので私が学校を卒業して10年近くが経とうとしています。自分ではまだまだひよっこのつもりですが、多くのことを経験してきた気がします。
振り返ってみると、最初の職場が上信越自動車道の建設現場でした。学校を卒業してはいるもの主に交通工学系を学んできたため、体験することのほとんどが新しい世界でした。独自の用語などにとまどいを覚えながらも工事の設計から積算・契約、発注後の現場管理と一通りのことを学ぶ機会を与えられました。高速道路に限らず、土木の分野で行うプロジェクトはどれもが規模が非常に大きいものなのですが、このときに感じたものは、一つのプロジェクトを成し遂げるのには多くの人の力が必要だということです。
例えばJHの行っている高速道路の建設事業でも、設計を担当するコンサルタント、施工を担当するゼネコン、地方自治体、地元の方々、そしてそれらをトータルでマネジメントするJH、その他土木技術者のみに限らず多くの方の協力によって事業が進んでいます。もちろん、多くの方たちが関係するということは、それだけ多くの人の意見の調整などが大変になってきますが、技術的な見地に立ってこれらをうまくまとめ上げていくということが今後の技術者に求められていることかと思います。
そのためには、土木分野の知識・知恵はもちろんのこと、それに限らず、幅広く社会、経済のことについて興味を常に持ち続けていることが必要だと思います。
そして、このようなコーディネートを行っているのがJHという組織です。 「社会基盤」という言葉が示すように、土木技術者の携わる分野は社会を創っていくことにあります。社会の求める社会基盤を創造すること、それに自分の力を役立てること、それこそが土木技術者としての醍醐味ではないでしょうか。自分自身、工事の完成までは現場にはおらず、また現場を離れて5年以上が経ちますが、未だに当時の現場(今は開通していますが)を訪ねることがあります。橋のデザインや擁壁の形状など、当時はまだ形を表していなかったものを現実に目の前し、多くの車が走行しているところを見ると、大きな充実感を感じます。
残念ながら現在、社会基盤を創る公共事業に対しては社会からの批判的な論調が多く目立ちます。土木の世界でも技術を「社会に対してどう使うべきか」から、技術が「社会においてどう使われるべきか」という見方が必要になってきていると思います。私もJHの職員として、高速道路の整備効果、つまりは社会においてどのような役割を果たしているか、また果たすべきかについて考える機会が多くあります。
土木工学を学んでいるみなさんも常にこのことを念頭に置いて、自分、自分の学んでいることと社会との関わりについて考えていてもらいたいと思っています。
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