我々の創り出すインフラは大規模かつ寿命が長く、将来にわたって社会に大きな影響を与えることになります。そのため、土木技術者の責任の範囲は学生時代に想像していたものに比べてとにかく幅が広いというのが私の実感です。
私はJH日本道路公団で高速道路整備に関わってきましたが、最初の7年間は上信越自動車道などを中心に200を超える橋の計画、設計、建設に携わりました。現場にもめぐまれ、橋梁分野では非常に権威のある土木学会田中賞の受賞橋梁にも2度めぐり合い、社内・社外の先輩技術者に大いに刺激を受けながら勉強を重ねることができました。発注者の立場でプロジェクトにかかわるため、住民の方や行政との協議・調整、事業費管理などの内業の占める割合も多く、技術的事項より調整業務が多いのも実情ですが、常に意思決定には責任ある立場で参画でき、“事業を動かしている”という満足感を得られました。
その後、JHの長期事業計画立案などを担当し、現在は、第二東名高速道路の建設に従事していますが、第二東名の技術的課題だけでなく、環境保全、景観の創造、地域社会との交流、事業の整備効果のとりまとめ、更には公共事業執行体としてのアカウンタビリティー向上の取り組みまで、直面している課題はさまざまです。
国際協力というテーマも土木技術者の貢献が非常に期待されている分野です。私もJH入社後にアメリカ合衆国に留学するチャンスを得ましたが、帰国後、いろいろな形で国際協力に参加する機会があり、今までに、国際協力事業団(JICA)などを通じて、研修プログラムの講師を行ったり、タンザニア、モンゴル、ベトナム、インド政府へ派遣されたりしました。そういった際に出会うCivil
Engineer達との出会いは常に印象深く、技術者として、心地よい満足感と大いなる刺激受ける貴重な体験です。
今後、土木の道を目指す人も、すでにその一歩を踏み出した人も、いずれ就職して技術者となった時には、学生時代の勉強とは比べ物にならないほど複雑な問題に出会うはずです。
そんな時には、技術者としての知見・経験だけでなく、人間としての哲学、美学などをしっかり持つことが重要だと思います。我々の創り出すものは人々に大きな影響を与えるのだから…。そんな意味からも、学生時代には土木工学以外にもさまざまな勉強、体験、挑戦をして、素晴らしい土木の世界に飛び込んできてほしいと思います。
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