大林組に入社して28年が過ぎましたが,2年間の留学期間を含めて19年以上米国で仕事をしています。過去10年間は米国における土木工事部門(U.S.
Heavy Civil Division)の責任者(General Manager)として,トンネル工事を中心として年間100億円〜150億円の工事量を受注及施工しています。ではどのような仕事をしているのか一口で言えば,資金繰りの心配を別にした小さな建設会社の社長をしているといった感じです。具体的には,
(1)見積及入札−どの工事を入札するのかを決めて,見積チームを編成して見積を行ない,入札を行ないます。当社単独で入札する工事もあれば,他社とJoint
ventureで入札することもあります。
(2)米国人の雇用及人事−工事が落札すると,直ちに施工体制を整えなければなりません。手持ちの社員の転勤を考えたり,必要にInterviewを行なって,Manager,
Engineer, Superintendent等を雇用します。また,工事の終りには,必要に応じて解雇(Lay
off)も行います。
(3)工事が始まると,現場の所長(Project Manager)が日々の業務を行ないますが,施主,Subcontractor,
Supplier等との重要なNegotiation等には参加します。
(4)その他,工事機械の購入及売却,安全及品質管理についての統括他,書き出せばきりがありません。
以上のように,10億円〜300億円の規模の工事を年間に15〜20件入札して,1〜3件受注しています。通常,工期は2〜6年ありますので,3〜8件の手持工事があります。
米国の土木業界(公共工事)は全くFairな価格競争であり,各社ともいかにして良い値段で落札し,(二番札との差がなるべく少ない)いかにして施工のcostを減らしてProfitを増大させるべきかに苦心しています。日本で時折,新聞紙上をにぎわしている癒着とか談合といったものは全くといって良いほど,見られません。ちょうど,一定のルールに従って競っているスポーツをしているような感覚です。そのため,より良い知恵のある人,より努力する人,運のある人が報われる社会になっています。
このような環境で,夢中で仕事をしているうちに今日まで17年間がすぎ去りました。このように書くと入社時から海外志向だったのかと思われるかも知れませんが,決してそうではありません。入社して6年目に本社に配属になるまでは,英会話,海外勤務とはおよそ縁のない,地下足袋で現場を走りまわっている社員でした。ところがある日,当時の上司から「会社の留学制度で留学するつもりはないか?」とたずねられました。その時は興味はなかったのですが,1年ほど考えた末,行くことにしました。今になって振り返ってみると,この上司に出会っていなければ,又上司にすすめられても決断していなければ,私の人生は(家族も含めて)全く異なったものになっていたと思います。もしずっと国内で勤務していたらどんな仕事をしていたかわかりませんが,現在の米国での仕事は,毎日,毎週,毎月が新しいChallengeであり,苦労もありますが,充実感があります。
人間の一生もさることながら,社会人生活も先がどうなるかわからないところに,苦労もありますが面白味があると思います。どうか,人との出会いを大切にして,又,常にChallenge精神を忘れずに社会人生活をEnjoyして頂きたいと思います。
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